渡邊教授『クルクミンの可能性』渡邊教授『クルクミンの可能性』

『クルクミンの可能性』

医学博士 / 横浜薬科大学 教授 渡邉 泰雄

クルクミンはウコンの代表的な機能性成分。

「ウコン」には秋ウコン、春ウコン、ガジュツ(紫ウコン)があり、ガジュツは漢方薬として、古くから胃腸管系の病気に使用されています。秋ウコンや春ウコンは伝承的に肝機能によいと言われ、“アルコールの友”として親しまれています。しかしウコンの摂取により、肝障害が生じることがあります。その原因はウコンに含まれている鉄分で、鉄分が多いと肝炎を悪化させることが知られています。この鉄分を少しでも低減させるために、抽出エキスを用いることが推奨されています。この抽出エキスの主な成分がクルクミンです。

クルクミンは秋ウコンに最も多く、春ウコンの3倍以上含まれています。ちなみにガジュツには、クルクミンは含まれていません。ウコンは、抗菌作用、鎮痛作用、胆汁分泌促進作用、血圧降下作用、子宮収縮作用、コレステロール分解作用、抗腫瘍作用、胃腸管系作用など多岐にわたって研究されています。これらの中で、ガジュツにはない機能が秋ウコンと春ウコンに有ります。この相違はクルクミンの有無であることが示唆されます。我が国では“アルコールの友”として広く知られているウコンは、欧米では抗炎症作用、抗がん作用を目指した研究が進められ、これらの作用はクルクミンとその代謝物によることが明らかにされています。

医学博士 / 横浜薬科大学 教授 渡邉 泰雄

医学博士 / 横浜薬科大学 教授

渡邉 泰雄

医学博士/横浜薬科大学教授 総合健康メディカルセンターセンター長 米国イリノイ大学ロックフォード医学校准教授、東京医科大学薬理学助教授、中国医科大学客員教授、日本薬科大学医療薬学科長を経て現職。
ウコンの他、15年にわたるキノコ類研究、アガリクスなど健康への効果が認められる食品についての研究でも知られる。

クルクミンは腸管と肝臓を循環し、長く効能を発揮する。

効能を発現する際には、どのような物質でも体内で代謝を受け、活性を高めたり弱めたりします。クルクミンも摂取された後、主として肝臓でUDP-グルクロン酸転移酵素(以下UGT)、もしくは硫酸転移酵素(以下SULT)により抱合され、血液中からはグルクロン酸抱合体や硫酸抱合体が検出されます。ヒトにおいては、これらUGTならびにSULTは複数の分子種が知られ、特にUGTによるグルクロン酸抱合は、クルクミンの効能に大きく関与していることが示唆されています。つまりクルクミンの機能発現および持続には、グルクロン酸抱合反応の関与が重要と考えられています。
さらに、我々の研究結果から、クルクミンの代謝物はUGT、SULT以外に、チトクロームP-450により生じるテトラヒドロクルクミン、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(以下GST)によるグルタチオン抱合体の存在が示唆されました。これらの結果は、クルクミンの多様な効能発現の解明にも繋がります。

クルクミンは肝臓で代謝を受けて、胆汁から腸管に排泄されます。さらに我々の研究から、一旦腸内に排泄されたクルクミンは肝臓に再運搬されるという、腸管と肝臓を行ったり来たりする、腸肝循環をする事が示唆されています。この腸肝循環はクルクミンの効能発現や効能時間の延長を考慮する際に、重要である事が明らかと成ってきています。

渡邉 泰雄教授

クルクミンを微細化することで、さらに効能が高まる可能性がある。

効果効能を議論する際、特に医薬品以外の場合には、代謝だけではなく吸収にも注目しなければなりません。その理由は、医薬品以外の大半は口から服用して消化管を通過して血液に移行して全身に運搬させなければならないためです。そのために消化管から血液に移行することで「吸収」された結果、はじめて効能を期待することができます。しかし、クルクミンは一般的に消化管などからの吸収が良くないことが知られ、その吸収効率と機能発現の矛盾がしばしば議論されています。我々は、従来のサイズと比較して、四分の一程度に微細化したクルクミンで、腸肝循環を基盤とした体内動態を比較検討しました。その結果、クルクミンを微細化することによりクルクミンの腸管吸収が著しく増大しました。

我々の研究のみならず、他の研究でもクルクミンの微細化が、「吸収」に大きな影響を与えることで一致しています。これらの研究成果は、世界中で研究されているクルクミンの機能性をさらに高め、治療への応用を活発化させる可能性を秘めています。

適度なサイズに微細化されたクルクミンには、
免疫を調節する作用も期待できる。

腸管には消化酵素を分泌する組織や栄養素、クルクミンなどを吸収する組織などがあります。その中に「腸管パイエル板」という免疫に関与する組織があります。このパイエル板には小さなポケットがあり、その中に食品成分などがスッポリと入り込むと、腸間膜リンパ節という場所から免疫細胞が誘引されて、免疫が調節されることが知られています。この腸管免疫機構の活性化を利用すれば、免疫のバランス異常を調節できるのではないかと考えられます。

クルクミンも腸から吸収されますが、パイエル板のポケットにスッポリ入るサイズに微細化されたクルクミンは、腸管免疫機構を適度に活性化するため、免疫調節作用が期待されます。

このようにクルクミンは、これからの「健康長寿」や「アンチエイジング」に欠かせない材料になり得ることが期待されます。